
保育士の仕事の中心は、子どもを預かり、保護者に代わって子育てをすることです。
ただし、ただ預かれば良いわけではありません。子どもの成長を温かく見守りながら、正しい生活習慣を身につけさせ、自立する力を育むことが求められます。
さらに子どもたちと直接かかわるだけでなく、その様子を保育日誌に記録したり、育児に悩む母親の相談に乗ったり、さまざまな役割を担っています。
もちろん、大変と感じる場面もたくさんあるでしょう。でも、そのぶん大きなやりがいのある仕事です。
当ページでは、そんな保育士が普段どんな仕事をしているのか?という部分を具体的に紹介していきます。
また、保育園の1日の流れとタイムスケジュールについては、こちらの記事でくわしく書いています。興味のある方は、あわせてお読みください。
記事の目次
保育士の仕事内容とは?
保育士の仕事内容には、大きく以下の6つがあります。
- 子どもに生活習慣を身につけさせる
- 子どもの健康や安全を管理する
- 子どもの社会性を育てる
- 遊びを通して心身を育てる
- 保護者に子育てのアドバイスをする
- 地域の子育て支援
とても大切な部分なので、ひとつずつ詳しくみていきましょう!
子どもに生活習慣を身につけさせる
幼児教育の基本的な生活習慣には、①食事 ②睡眠 ③排泄 ④清潔 ⑤衣類 の5つがあげられます。
①食事

子どもたちに、食事のマナーや食べる楽しみを伝えていきます。
たとえば、「いただきます」「ごちそうさま」がしっかり言えるように指導したり、箸やスプーン、フォークの使い方を身につけさせたりします。
また、苦手なものを食べられるようにする工夫も大切です。最近は「食育」に力を入れている保育園も多く、畑で育てた野菜をみんなで収穫し、自分たちで調理して食べるなどの取り組みも増えています。
②睡眠

子ども達は、午前中にいっぱい遊び、お昼ゴハンを食べたら、カラダを休ませるためにお昼寝をします。
寝つけない子どもがいたら、うまく睡眠に入っていけるよう工夫しましょう。
子どもの背中を一定のリズムで軽くトントン叩いてあげると、寝やすいようです。またオシャベリ同士はくっつけず、よく寝る子どもたちの間に寝かせるのも効果的ですよ。
③排泄

いわゆる、トイレトレーニング。おむつを外す練習をしたり、トイレの使い方を指導したりします。
ポイントは、失敗しても優しく見守り、1人でできたら思い切りほめてあげること。この繰り返しで、すこしずつ子どもたちは覚えていきます。
④清潔

清潔には 2通りあり、1つ目が「自分自身を清潔」にすること、2つ目が「身の回りの整理整頓」をすることです。
外遊びをした後、子どもの手足は真っ黒です。また食べ物をこぼしたり、おしっこを漏らしたり、とにかくよく汚してしまいます。
外から帰ったらうがいと手洗いをする、食べたら歯磨きをする、おしっこを漏らしたらオムツを取り替えるなど、基本的な衛生習慣を身につけさせましょう。
また、遊んだあとは必ずオモチャを片付けたり、カンタンな掃除をさせるなど、キレイであることの気持ちよさを伝えていくことも大切です。
⑤着替え

子どもが、服の着脱を1人でできるようになるための練習をします。
ボタンのかけ方から外し方、靴下や靴の脱ぎ履きまで。できない子には手を貸しながら、あせらず成長を見守りましょう。
着替えにせよ、トイレにせよ、なかなか上手くできなかった子どもが、立派にできるようになっていく姿をみると、保育士をやっていて本当に良かったと思えます。
子どもの健康や安全を管理する

健康面
子どもの顔色や様子をみて、健康状態をチェックすることも大切な仕事です。
4歳・5歳児クラスになると、子ども達も自分で体調不良を訴えてくるようになります。しかし、3歳以下の子どもは具合が悪くても言葉でうまく伝えることができません。
「静かに遊んでいると思ったら、39度の高熱だった」なんてことも…。このような変化に気付くためには、ちょっとした仕草や顔色、声、目の輝きなどから子どもの出す不調のサインを読み取る必要があります。
「今、子どもが何を考え、何を求めているのか?」ということを、常に頭を働かせて意識しておくことが大事です。
安全面
子どもの安全を確保することも大切な仕事です。
とくに赤ちゃんをあずかる際は、ベッドからの転落やうつぶせ寝による窒息など、一瞬の油断が重大な事故につながりかねません。
保育の仕事は、まず ”子どもありき” 。他のことに気を取られて、目を離さないように気をつけましょう。
また、日頃から園内の施設や遊具に危険がないかチェックしたり、子どもが帰ったあとにオモチャの消毒をしたり、砂場にシートをかけてネコのフンなどが入らないようにしたり、衛生面にも気を配ります。
とはいえ、あまり過保護になり過ぎるのも考えものです。
子どもに小さなケガはつきもの。小さなケガを経験することで、おのずとケガから身を守るための術が身についていくのです。
そのため、保育園では、子どもが安心して転んだり、ぶつかったりできるような環境を整えてあげることが大切になります。
子どもの社会性を育てる

保育園で過ごす乳幼児期は、人格を形成するうえで、とても重要な時期です。
保育士の役割とは、そのような大切な時期に、社会で生きていくうえで土台となる人間関係の基礎を子どもに伝えていくこと。
しかし、子どもにもそれぞれ個性があり、育った環境も異なります。保育園という集団生活を営む場では、一緒に遊ぶ友達ができる一方、当然ケンカや揉めごとだって起こります。
ケンカ自体、決して悪いことではありません。他者とコミュニケーションを取ることを学ぶ重要な機会にもなり得ます。
その貴重な機会を、大人が頭ごなしに否定するのではなく、どう一緒に考えていくか。どんな言葉を投げかけ、どういう方向に導いていくのか。
保育士として、真価が問われる場面といえるでしょう。
まず、子どもは、自分の気持ちを相手に伝えることを学び、そこから相手にも相手なりの気持ちがあることに気づき、お互いの気持ちを知ることになります。
そして、最終的にどうやったら問題を解決できるのか、一緒になって考えていきます。
他者を思いやる、相手の立場になって考える、お互いの価値観を認め合う。とても難しく、簡単なことではありません。
子どもの世界に限った話ではなく、大人にとっても重大なテーマです。
とはいえ、この時期の子どもに与える大人の影響力というのは、計り知れないほど大きなモノ。保育士の対応の仕方ひとつで、子どもの性格や人格形成にも多大な影響を及ぼしかねません。
その責任をしっかりと肝に命じ、適切な支援をしていく必要があるのです。
遊びを通して心身を育てる

子どもは遊ぶことが大好きです。
食事とお昼寝の時間以外は、いつも遊びの時間。たくさん遊べば遊ぶほど、すくすくと成長していきます。
晴れた日は、砂場で泥んこ遊びをしたり、滑り台やブランコなどの遊具遊びをしたり、園庭を三輪車で走り回ったりする子もいます。
雨の日は、室内で絵本の読み聞かせをしたり、お絵かきや粘土遊びをしたり、子ども達は思い思いに大好きな遊びに取り組んでいます。
わたしの保育の根底には、「子どもと一緒に楽しいことをたくさんしたい」という思いがあります。だから、遊ぶときは先生というより”仲間”です。
できるだけ口や手は出さず、遊び方も子ども達に任せています。そうすると、新しい遊びをドンドンと考え出すので、大人が想像もつかないような遊びが生まれることもあります。
そこで「すごいね!」と素直に感動すると、子どもたちは自信をつけてさらに成長することができるのです。
保護者に子育てのアドバイスをする

1日の報告
保護者との信頼関係を築いていくことも、保育士としての重要な仕事です。
忙しい朝より、お迎えのタイミングであれば、少し余裕を持って話をする時間も取れるでしょう。その日の出来事や子どもの変化を伝えることで、保護者は我が子の成長を知ることができます。
「今日は給食を全部たべて、お片付けもしてくれたんですよ」「誰も見ていないところで、トイレのスリッパをキレイに揃えてくれたんですよ」と、気づいた姿を伝えるようにします。
そうすると、お父さんお母さんはとても喜んでくれますよ。
また、ケガをしてしまったり、体調が優れなかったりしたときも、できるだけ詳しく状況を共有しておくことで、後々のトラブルを防ぐことにも繋がります。
保育日誌・指導計画・連絡帳の作成
毎日の子どもの様子を記録したり、保育の計画を立てたり、書類作りも欠かせない仕事です。
- 連絡帳
保育士と保護者の間で、連絡事項を伝え合うノートです。
子ども 1人につき 1冊ずつ用意されていて、保育園での子どもの様子や起きた出来事を毎日記入しています。保護者と育児に関する悩みを共有したり、信頼関係を築いたりするうえで役立っています。
- 保育日誌
クラス担任が、毎日の子供たちの様子や保育の反省点などを記録し、最終的に園長先生が目を通してアドバイスをくれます。
保育日誌を作成する際、日ごろから子どもの様子をよく見ておかないと、なかなか書けません。どんな保育を目指しているのか、常に自分なりに考えておくことが大切です。
- 指導計画
保育園では、園の保育方針に基づいて、クラスごとに保育計画を立てています。
まず、新年度に 1年間の指導計画をつくり、そこから逆算して「月」「週」ごとの細かい計画を立てていく流れです。ちなみに、わたしの働いていた保育園では、毎月一回、各クラスごとに前月の反省を踏まえ、翌月の目標を決める職員会議が開かれていました。
計画をもとに実践し、反省をして、さらに次の目標を立てる。この一連の流れを繰り返すことで、日頃おこなっている保育を見直すキッカケになったり、新しい気付きが得られるヒントが見つかったりします。
地域の子育て支援

保育園には、地域における「子育て支援」の拠点としての役割が期待されています。
その背景には、社会全体の少子化や核家族化によって、これまでの家族や地域の子育て機能が低下していることが大きく影響しています。身近で子育てを助けてくれる大人が少なくなったことで、孤独感や不安感を感じる親が増え、「育児ノイローゼ」や「虐待」などの深刻な問題につながっているのです。
どんなに我が子が可愛くても、ときには疲れたり、悩んだりすることだってあるでしょう。
そんな保護者たちを支えるため、保育園は、親子の仲間づくりの場、気軽に子育ての相談や情報が得られる場、親子あそびのサポートの場など、さまざまな目的で利用されるようになりました。
また、そこで働く保育士は、保護者のありのままの気持ちを受けとめ、心のケアやアドバイスをしたり、一時預かりで子どもを預かり、お母さんに気分転換を図ってもらったりしています。
子育ては、決して 1人ではできません。そこには必ず、人のぬくもりが必要です。
親が子どもを可愛いと感じ、子育てに喜びを見出し、すべての子どもが幸せな幼少時代を過ごせるように支えていくことも、保育士の大切な役割なのです。
まとめ
いかがでしたか?
ここまでお読みになり、保育の仕事って「責任が重く、大変そう… 」と感じた人も多いのではないでしょうか。
確かに、子どもを育てること、子どもと向き合うことは、決してラクではありません。接し方に悩んだり、振り回されたり、ケガをさせてしまい落ち込んだり、逃げたくなる場面もたくさん出てくるでしょう。
でも、そのぶん大きなやりがいのある仕事です。
お母さんと離れるのが寂しくていつも泣きじゃくっていた子どもが、すくすくと成長して立派に卒園していく姿をみると、本当に感動します。
保育士をしていて良かったなぁ、と思える瞬間です。
さらに、現場では “昨日できなかったことが、今日はできようになる” という状況をよく目の当たりにします。子どもが日々成長していく過程にたずさわれる仕事って、とっても幸せで魅力的だと思います。
もし当記事をお読みいただき、保育の仕事に少しでも興味を持たれたならば、ぜひ資格の取得を検討してみてくださいね。
また、保育園の1日の流れとタイムスケジュールについては、こちらの記事でくわしく書いています。興味のある方は、あわせてお読みください。